春はヒシアケボノ、ダノンヨーヨーシロチャンなる、ヤマニンゼファー少しキメラヴェリテ、シゲルスダチたるクモハタの細くマカヒキたる、と馬三郎の清少納言が調教レポートに書いたように、春のG1レースは朝を過ぎ、午前中を消化した。
改元早々に猛威を振るう流行病に起因して、静まりかえったスタンドに録音のファンファーレという味気ないレースが続く。
無料のグリーンチャンネルと睨めっこしていると、ミッドナイト競輪でも見てるのではないか、という錯覚に襲われることもしばしばである。
高松宮記念あたりに山間での短期労働を終え、東京へ帰って学業に勤しみつつ、週末は中山にでも詣でようかと考えていた私も、未だ山中に留まることを余儀なくされている。
この状況下でも競馬が催されていることに感謝しながら、今は目の前の予想に全力で取り組むばかりだ。
全力で取り組んでいる筈だが、表題通り春のG1はめちゃくちゃだ。平場は勝ってンだよ、とお決まりのセリフを吐き出すのが精一杯で、メインはほぼ全敗中。収支のテーブルには思わず目を背けたくなるほどに赤字が並んでいる。
思えば、阪神大賞典の川田から全ての歯車が狂ったような気がする。こんなん川田から流して終わりやろ、と舐めてかかった僕を、ルーラーシップの遺伝子が戒めたのだろうか、父親や母父譲りの出遅れをかましたキセキは、ド派手に暴走して仁川の坂に散った。
高松宮記念
地獄の連敗街道はクリノガウディーの降着から始まった。
ダート替りで見事フェブラリーSを制したモズアスコットに、アメリカ血統の粋を集めたSpeightstown*1が娘、モズスーパーフレアの両頭に候補を絞り、後者を切った。
モズの娘は小回りの秋買いたいね、と世迷い事を吐いた俺を殴ってやりたい。
スプリント戦線で堅実な活躍を見せていたダイアトニックすら目を向けず、モズアスコットに買い目を絞った挙句、某フォロワーが一押ししていたクリノガウディーの単複を握りしめてレースに臨み、「(セイウン)皇成ー!」などと叫んでいたことは馬券師として万死に値するだろう。
結果的に早め先頭からソラを使ってしまったクリノガウディーは、G1では久々の四着降着の憂き目に合い、俺の松若きゅん*2が初めてG1を勝った。
モズアスコットはハナからスプリントのペースについていけずに馬群に沈んだ。
大阪杯
産経大阪杯、キレなくなったワグネリアンを必死に内枠へ入れて運ぼうとするいっくんの姿に、思わず涙が出てしまった。
いっくんは野路菊Sの頃の鬼脚を念頭に入れていたのだろうが、今のワグネリアンは先行持続型なのだ。平均ペースから詰めるだけの瞬発力はもうない。
敗北の原因というのは、古馬にかけての一番大事な時期にワグネリアンのそばにいてやれなかった福永祐一、おまえだ。
福永祐一とワグネリアンのすれ違いは、ロックダウン下で徐々にすれ違っていくカップルを想起させられる。一度すれ違ってしまった関係が戻ることはほとんどない。
我々はその現実を知っているからこそ、一生を添い遂げたカップルや、引退までコンビを組み続けた人馬に惹かれるのだろう。
馬券はワグネリアンから流してたので外れた。
桜花賞
「おっちゃん僕知ってるで、桜花賞ってのはムチムチの早熟ノーザンダンサーが外枠から捲り勝ったり先行して押し切ったりするって。だから北味にデインヒルとサドラー足してガチムチにしたレシステンシアで間違いないって!」
「坊主、血統だけやなくて展開も読まなアカンで、ああいう先行馬は絶好のペースメーカーにされるんや」
「でもおっちゃん、スマイルカナおるで、ノーザンダンサーの入り具合もいい塩梅や」
「大知が武に勝てるわけないやろ、騎手もよく見るんや」
「じゃあリアアメリアは買えないね」
「坊主、確かに今春の川田は絶不調や。だがな、わしのような命賭けてる馬券買いはな、有力馬が連におらんと怖なって夜も眠れなくなるんや」
「そうかな〜……」
「あとはサドラーにSir Ivorのクロスがあるサンクテュエールでも買っておけばええ、これでドン勝ちや!」
「……おっちゃん、僕何か見落としている気がするんや、例えばこのデアリングタクトなんか、SSの4×3へいい塩梅にサドラーが……あっ、締め切ってもた」
皐月賞
愚かな者は心のうちに「中山の一枠一番福永はない」と言う。彼らは腐れはて、憎むべき事をなし、善を行う者はない。
口語訳詩篇14:1
この時、既に原資は尽きかけていた。定められた予算の中で、いかに小穴を当て、遊興費を増やすか。こんなせせこましい目標設定の下に、二年間馬券を買い続けた、そのツケが春の大型連敗ロードである。二年間、苦楽を共にしてきたPATの口座に、金がない。あれだけあった筈の金は、購入履歴へ化けた。せめて紙屑に化けてくれればよかったのに
。
コントレイルを頭に据えた。
サトノフラッグを切った。
クリスタルブラックへ流すのを我慢した。
サリオス・ダーリントンホール・ブラックホールに賭けた。
そして、福永を信じた。
ゲートが開き、一番にコントレイルが好スタートを切る。
しかし、福永はズルズルとポジションを下げていき、後方インベタのビッグアーサーポジションまで行ってしまった。
残り800、上手い騎手はペースが緩んだ時に動き出す。
透過レイヤーを着た武豊が捲っていくその後ろ、コントレイルがいた。
中継カメラから姿を消したコントレイルは、四角でいつの間にかサトノフラッグの外に併せていた。
そして、大外逆襲のコントレイルと、好位抜け出しのサリオスが馬体を併せ、皐月賞は壮絶なマッチレースへと発展する。
ゴール板手前、わずかにコントレイルが抜け出す。
いっくんは運命に勝ち、俺は三連複を手に入れ…………
ガロアクリークって、何?
というわけであと一ヶ月馬が買えません。たすけて。
*1:血統表見てみろよ、Gone Westに母父Storm CatでSecretariatの4×3が完成し、牝系にもう一本Bold Rulerがあって、さらにBuckpasserが隠れてるんだぞ、うっ射精る……!